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営業とマーケティングは、どちらも企業活動において欠かせない存在ですが、役割や扱うデータは異なります。
営業は、商品やサービスを顧客に提供し、売上を生み出す活動であり、一方のマーケティングは、顧客のニーズを理解し、商品開発や販売戦略を通じて市場での優位性を築く活動です。
近年では、両者が扱うデータをどのように連携させるかが成果を左右する重要なテーマになっています。 高機能なCRMや営業支援ツールを導入する企業も増えていますが、中小企業や個人事業主にとっては、まずスプレッドシートによるデータ管理でも十分にDXの第一歩を踏み出せます。
この記事では、営業とマーケティングそれぞれのデータの違いを整理しながら、スプレッドシートを活用した実践的な管理・共有方法を紹介します。
目次
スプレッドシートで考えるDXの第一歩
スプレッドシートの活用は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の入り口ともいえます。
DXとは、最先端のシステムを導入することではありません。まずは「データを見える化し、共有できる仕組みをつくること」から始まります。
スプレッドシートの活用は、まさにその第一歩。
情報を整理し、チームでリアルタイムに共有できるようにすることで、アナログな業務をデジタルに置き換え(=デジタイゼーション)、さらにそのデータを活用して業務を効率(=デジタライゼーション)することが可能です。
まず最初にDXの段階を理解しておきましょう。
- デジタイゼーション(Digitization):紙やアナログ情報をデジタル化する
例)顧客台帳をスプレッドシートにまとめる - デジタライゼーション(Digitalization):デジタル化した情報を活用して業務を効率化する
例)スプレッドシートで営業進捗や顧客情報をチーム共有する - デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation):デジタル技術を活用して業務や組織のあり方を変革し、新しい価値を生み出す
例)スプレッドシートで蓄積した顧客データをもとに、マーケティング戦略や営業施策を改善する
*DX(デジタルトランスフォーメーション)についての正式な定義や政策の方向性は、経済産業省が詳しく解説しています。
担当者に聞く「DXとは」|経済産業省
産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進施策について|経済産業省
デジタル技術の活用を単なる効率化にとどめず、組織やビジネスモデルを変革する取り組みとして捉える視点は、今後の中小企業の経営にも欠かせません。
スプレッドシートを活用した情報整理と共有は、DXの最初のステップを現場レベルで実現するアプローチです。大切なのは、ツールを導入することではなく、データをチームの共通資産として使える形にすることです。
さらに昨今では、CRMやMA、営業管理ツールなど多数のツールが存在します。
まずDXの一歩は、専用ツールを導入する前に、まずは自社の業務データを整理・共有できる基盤を整えることが、DXを成功させる大きな一歩になります。
スプレッドシート活用が便利な理由
スプレッドシートが便利な理由は、Excelと似た操作感でありながら、「共有」「更新」「自動化」に強いという大きなメリットがあります。
比較項目 | Excel(ローカル) | Googleスプレッドシート (クラウド) |
共有性 | メール添付で都度やり取り | URL共有で同時編集が可能 |
更新管理 | バージョン管理が煩雑 | 自動で履歴が保存・復元可能 |
操作環境 | PC中心 | スマホ・タブレットからも更新可 |
自動化・連携 | VBAなど専門知識が必要 | GoogleフォームやAppSheetと連携可 |
コスト | ライセンス契約が必要 | Googleアカウントがあれば無料 |
とくに中小企業や少人数チーム、リモートワークが多い企業などは、「社内サーバーがない」「メンバーがリモート勤務」「外部パートナーとデータ共有が多い」といったケースも多いため、クラウド型のスプレッドシートの方が運用しやすいのです。
また、将来的にCRMやMAツール導入を考えている企業の場合、スプレッドシートでデータ整理をしておけば、CSV形式でそのまま読み込めるたり、要件定義がしやすかったりと、 将来のデータ移行がしやすいという実利的な利点もあります。
では次にどのようにデータを作成していけば良いのか、みていきましょう。
営業とマーケティングが見る「データ」は同じでも目的が違う
スプレッドシートを活用したデータ整理が進むと、次に直面するのが「営業」と「マーケティング」でのデータの見方・使い方の違いです。
同じ顧客リストを共有していても、見るポイントがまったく異なるため、ここを整理しておくことでチーム間の連携が格段にスムーズになります。
ここでは、営業とマーケティングのデータ活用の側面で、どのようなデータをみているのか、わかりやすく整理していきましょう。
営業とマーケティングの違いについて、詳しくはこちらの記事もお読みください。
営業が見るデータ「今売るための行動情報」
営業担当者が重視するのは、案件や顧客の現在地を把握するデータです。
たとえば次のような情報をもとに、提案やフォローの優先順位を判断します。
- 商談ステータス(アプローチ/提案中/見積提出済み など)
- 担当者・決裁者・次回訪問予定日
- 見積金額や受注確度
- 過去の取引履歴や対応メモ
営業が重視するのは「確度(=成約につながる可能性)」「タイミング」「人」。 つまり、「今すぐ売上につながるデータ」です。
マーケティングが見るデータ 「次に売る」ための分析情報
一方でマーケティングは、見込み客(リード)の行動傾向や反応率をもとに、次の一手を考えます。
具体的には以下のようなデータを扱います。
- 流入経路(広告/SEO/SNS/紹介など)
- Webサイトやメールの開封率・クリック率
- 資料請求・イベント参加などの反応履歴
- 顧客属性(業種・規模・担当部署など)
マーケティングの目的は「リードを育て、営業が動きやすい状態をつくる」こと。
つまり、「次の売上を生むためのデータ」を扱います。
同じスプレッドシートでも「見る切り口」が異なる
営業とマーケティングの目的は異なりますが、両者のデータは密接に関連しています。
たとえば、マーケティングが取得した「反応率の高い属性」を営業が活かせば、提案精度が上がります。
逆に、営業が「受注に至った理由」をフィードバックすれば、マーケティングの施策改善にもつながります。
こうした循環をスプレッドシート上で設計することで、ツールを超えた「営業とマーケティングの共通言語」を生むことができるのです。
スプレッドシートで実現する「営業×マーケ」データ共有設計
営業とマーケティングの役割が違っても、扱うデータは密接に関連しています。
スプレッドシートを使えば、高価なCRMツールを導入しなくても、両者のデータを一元管理し、共有・分析することが可能です。
ポイントは、無理に「一つの表で完結させようとしない」こと。
目的に応じて複数のシートを役割分担させることで、シンプルで使いやすく、チーム全体で更新できる設計になります。
さらにスプレッドシートでは、IMPORTRANGE や QUERY 関数などを使ってシート間でデータを自動連携できるため、それぞれの目的別シートを分けても、必要な情報を一箇所にまとめて参照することができます。
このように「分けて管理し、つなげて活用する」設計が、運用のしやすさとミスの少なさを両立させます。
ここからは、一般的なデータ作成の例をご紹介します。
1. 顧客リスト(ベースデータ)
まずはすべての情報の土台となる顧客リストを作成します。営業・マーケティングの双方で参照する中心のデータです。
カテゴリ | 項目例 |
企業情報 | 会社名/業種/所在地/従業員数 |
担当者情報 | 氏名/役職/メールアドレス/電話番号 |
接点履歴 | 初回接触日/流入経路(広告・紹介など)/対応担当者 |
ステータス | 見込み/商談中/受注/失注/フォロー中 |
このシートは「変更履歴の自動保存」機能を活用し、誰がいつ更新したかを可視化しておくと便利です。
さらにホストや社内独自の顧客管理ツールなどがあり、顧客番号などが存在する場合は、その専用番号などのカラム(項目)も作成しておくと便利でしょう。
2. マーケティング施策管理シート
マーケティングチームがリードを獲得するための施策を一覧化し、どの施策がどれだけ反応を得たかをスプレッドシート上で可視化します。
主な項目例:
施策名 | 開始日 | メディア | 獲得リード数 | CVR(コンバージョン率) | 備考 |
SEO記事A | 2025/05/01 | Webサイト | 120 | 3.5% | CTA改善で上昇傾向 |
メルマガ#5 | 2025/06/10 | メール | 85 | 4.2% | 開封率25% |
こうして得たデータを「顧客リスト」にある情報と紐づけることで、どの経路から獲得したリードが実際に受注に至ったのかを可視化できます。
ただし、きちんとした計測を行うためには、Webサイト側で流入元や行動を把握できるよう、マイクロコンバージョンなどのタグを正しく設置しておくことが必要です。(コンバージョンポイント<「資料請求」「ボタンのクリック」「スクロール完了」など>も事前に社内で確認しておきましょう。)
これにより、スプレッドシート上の集計データと実際のアクセスデータを照合し、より精度の高いマーケティング分析が可能になります。
3. 営業進捗管理シート
営業チームが現在進行中の案件や見込み顧客の状況を管理します。このデータが、マーケティング側の「次のアプローチ」設計にも役立ちます。
主な項目例:
顧客名 | 案件名 | 状況 | 受注見込み(確度) | 次回対応日 | 担当者 |
株式会社A | 新システム導入 | 見積提出済み | 80% | 10/30 | 田中 |
株式会社B | 保守契約更新 | フォロー中 | 50% | 11/05 | 佐藤 |
営業シートをマーケティング側と共有することで、「どのリードが実際に受注につながったか」「どの経路のリードが質が高いか」が見えてきます。
さらに、失注ではないものの「今は必要ない」と回答された顧客に対しても、「いつ頃再度お声がけするか」といった次回アプローチのタイミング(タッチポイント)を可視化できます。
こうしたフォロー計画をシート上で管理することで、機会ロスを防ぎ、リードの再活性化にもつながります。
現場で“動く”仕組みを作る──設計より運用を意識する
ツール導入よりも前に考えるべきことは、「どんな仕組みを作るか」ではなく、現場でどう使うかです。
どれほど優れたシステムでも、入力が面倒だったり、活用の目的が曖昧だったりすれば定着しません。中小企業や少人数チームでは、まずは現場に馴染むシンプルな運用から始め、徐々に仕組みを育てていくことがDX成功への近道です。
何を作るかより、「どう使うか」を考える
スプレッドシートを活用した管理では、完璧なフォーマットを作ることよりも、現場で使われる仕組みを整えることが重要です。
見た目や自動化よりも、日常の業務に自然に溶け込む形で使えることが成果を左右します。
たとえば、
- 誰が・いつ・どの目的で入力するのかを明確にする
- 更新の手間を最小限にして、記入を「負担」ではなく「習慣」にする
- 定期的に見直しながら、チームで育てていく
こうした設計により、スプレッドシートは単なる記録表ではなく、チームで動かすデータ基盤に変わります。
たとえば営業スタッフであれば、「このデータを見れば次の行動が決めやすい」と感じられるようになると、自然と更新作業も習慣化されます。
入力が負担ではなく「自分の仕事をスムーズにする行動」へと変わる、これこそが現場で動く仕組みをつくる本質です。
スプレッドシート連携で「ツール化」も可能に
Googleスプレッドシートは、AppSheetやGoogleフォームなどと連携することで、「使いやすさ」を維持しながらツール化することも可能です。
たとえば
- フォーム入力で顧客情報を自動追加
- ステータス更新でSlackに通知を送信
- 担当者別ダッシュボードを自動生成
このように、日々の業務フローに自然に組み込むことで、中小企業でも使えるDXが実現します。
さらに昨今では、CRMやMA、営業管理ツールなど多くのクラウド製品がありますが、それらを導入する前にまず、自社のデータを整理・共有できる基盤を整えることが重要です。
そして、一気に完璧な仕組みを作ろうとする必要はありません。まずは営業管理や顧客リストなど、「最も活用頻度が高い領域」から着手して、運用を重ねながら段階的に拡張していくのが現実的です。
スプレッドシート運用の注意点
スプレッドシートは、コストを抑えて柔軟に始められる反面、データ量・セキュリティ・運用負荷の3点に注意が必要です。
まず、扱えるデータ量には上限があり、行数や関数が増えると動作が遅くなることがあります。
初期は小規模運用から始め、年度別や事業別にシートを分けるなどで安定した運用が可能です。
また、URL共有や権限設定ミスによる情報漏えいリスクも見落とせません。
閲覧・編集権限を明確に分け、シート保護や共有履歴の確認を徹底しましょう。
さらに、運用が複雑になると現場での入力が続かず、シートが形骸化するケースもあります。
入力ルールを簡潔にし、「誰でも更新しやすい状態」を保つことが定着の鍵です。
スプレッドシートは、CRMツールのような多機能性は持ちませんが、導入ハードルの低さ・柔軟なカスタマイズ性・将来の移行のしやすさという強みがあります。
これらを理解した上で、自社の規模や目的に合わせた使い方を設計することが重要です。
スプレッドシート管理は、次のDXステップへの資産になる
スプレッドシートでデータ管理をしておくことは、単なる一時的な管理方法ではなく、将来のツール導入をスムーズにする資産づくりにもつながります。
CRMやMAなどのクラウドツールを導入する際には、既存の顧客情報や営業履歴、マーケティングデータを「どのように整理しているか」が重要になります。
スプレッドシートで管理しておけば、
- 各項目が明確に整理されている(=要件定義が進んでいる)
- CSVやExcel形式でそのまま読み込み可能
- 現場の運用フローがすでに整っている
といった理由から、データ移行がスムーズに進みやすいのです。
つまり、「いきなりシステム導入」よりも、まずスプレッドシートで管理を整えることが、DXへの最短ルートといえるでしょう。
まとめ:スプレッドシートから始める、現場主導のデータ活用
大掛かりなシステム導入から始める必要はありません。
営業とマーケティングの現場が「使いやすいデータ」を自分たちの手で整えることが、最も実践的な第一歩です。
- 複雑な管理システムを導入せずに、即日運用ができる
- 現場の使いやすさを優先して、データの定着率が高まる
- 将来的なCRMやMAツール導入にもスムーズに移行できる
こうした「現場で動くデータ設計」が、結果的にDX(デジタルトランスフォーメーション)につながります。
まずはスプレッドシートで、自社の営業・マーケティングを支える共通データ基盤をつくるところから始めてみましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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